自転車の変速レバーに「1・2・3」と表示されていても、後輪には外装変速のような複数の歯車が見えません。「レバーを動かすだけで、なぜペダルの重さが変わるの?」と疑問に感じやすいところです。
内装3段変速では、後輪中央のハブ内部にある歯車機構によって、スプロケットから車輪へ伝わる回転の比率を3段階に切り替えています。
代表例のシマノNEXUS「SG-3R40」では、1速が0.733、2速が1.000、3速が1.364です。つまり、1速は車輪側の回転を抑えて軽くこぎやすくし、2速は基準となる直結、3速は車輪側を増速する構成になっています。
ただし、内装3段ならすべて同じギア比になるわけではありません。この記事では、1・2・3速の使い分けから内部の仕組み、モデルによる違い、変速できないときに確認したい点まで順番に整理します。
内装3段変速とは?まず仕組みを簡単に
後輪ハブの内部でギア比を変える
「ハブ」とは、自転車の車輪の中央にある部分です。内装変速では、この後輪ハブの中に変速機構が収められています。
外から見ると後輪のスプロケットは基本的に1枚ですが、ハブの内部で力の伝わり方を切り替えることで、同じスプロケットを使ったままペダルの重さを変えられます。
ここで重要になるのがギア比です。
内装ハブのギア比は、簡単にいえば「スプロケット側から入った回転を、車輪側へどのくらいの回転数で伝えるか」を示します。
- 1.000より小さい:車輪側の回転を減らす
- 1.000:入力と出力が同じ比率
- 1.000より大きい:車輪側の回転を増やす
実際にペダル1回転で車輪が何回転するかは、内装ハブだけでなく前側のチェーンリングと後ろのスプロケットの歯数にも左右されます。
考え方としては、「前ギアの歯数 ÷ 後ろギアの歯数 × 内装ハブのギア比」で、ペダルから車輪までの全体的な回転比が決まります。
外装変速との違い
内装変速と外装変速では、「どこで変速しているか」が大きく異なります。
| 比較項目 | 内装変速 | 外装変速 |
|---|---|---|
| 変速する場所 | 後輪ハブの内部 | 外側の複数のスプロケットと変速機 |
| 歯車の見え方 | 主要な変速機構は外から見えない | 複数の歯車が外から見える |
| 停止中の変速 | 対応する内装ハブでは可能 | 基本的にチェーンを動かしながら変速する |
| 変速段数 | 3段など比較的少ないものが多い | 6段・7段以上など細かく選べるものが多い |
| 整備 | 内部整備には専門知識が必要 | 機構が露出しており、チェーンや変速機の状態を確認しやすい |
内装式は「メンテナンス不要」という意味ではありません。変速機構がハブ内部に収められている一方、内部の点検や修理には専用の知識が必要です。
1・2・3速は何が違う?
一般的な内装3段では、数字が小さいほどペダルが軽く、数字が大きいほど重くなります。使い分けの目安は次のとおりです。
| 段数 | ペダルの感覚 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 1速 | 軽い | 発進・上り坂・荷物が重いとき |
| 2速 | 中間 | 一般的な平地走行 |
| 3速 | 重い | 速度が乗った平地など |
1速|発進・上り坂
1速は、ペダルを軽く回したい場面に向いています。
信号からの発進、上り坂、荷物を載せているときなど、低い速度からこぎ始める場面では1速が使いやすくなります。
軽い代わりに、同じペダル回転数なら2速や3速より車輪の回転数は少なくなります。そのため、速度が上がった後も1速のままだと、足だけが速く回っているように感じることがあります。
2速|普段使い
2速は、平地を普通の速度で走るときに使いやすい中間のギアです。
シマノSG-3R40では2速の内装ギア比が1.000になっており、ハブ内部では基準となる直結の段です。
ただし、後述するSG-3R75-Bのように2速が1.000ではないモデルもあります。「内装3段の2速は必ず直結」と覚えるのではなく、搭載されているハブの仕様を確認するのが確実です。
3速|速度を出したい平地
3速はペダルが重くなる代わりに、ペダル1回転あたりに車輪を多く回したい場面に向いています。
平地で十分に速度が乗り、「2速では足の回転が速すぎる」と感じたときに3速へ上げると使いやすくなります。
一方、発進時や上り坂で無理に3速を使う必要はありません。道路状況や自分の脚力に合わせて、無理なく回せる段数を選ぶことが大切です。
内装3段の内部では何が起きている?
遊星歯車の考え方
内装変速ハブでは、遊星歯車機構と呼ばれる仕組みが利用されています。
遊星歯車機構は、中央の歯車、その周囲を回る複数の歯車、それらを支える部品、外側のリング状の歯車などを組み合わせた構造です。
名前だけを見ると難しく感じますが、重要なのは「同じ歯車の組み合わせでも、どこから力を入れ、どこへ力を伝えるかによって回転数を変えられる」という点です。
内装ハブでは、シフトレバーを操作するとワイヤーやプッシュロッドなどを介してハブ内部の切り替え機構が動きます。クラッチなどによって力が伝わる経路が変わり、減速・直結・増速を使い分けます。
なお、内部部品の構成や力の伝わり方はモデルによって異なります。遊星歯車という基本原理は理解に役立ちますが、すべての内装3段がまったく同じ内部構造とは限りません。
ギア比が変わる仕組み
SG-3R40を例にすると、3段階の違いは数値で見ると分かりやすくなります。
- 1速 0.733:入力より車輪側の回転を減らす減速側
- 2速 1.000:入力と出力の比率が同じ直結側
- 3速 1.364:入力より車輪側の回転を増やす増速側
つまり、単に「大きさの違う歯車を3枚選んでいる」のではありません。同じハブの中で力の伝達経路を切り替え、3種類の回転比を作っているのが内装3段変速のポイントです。
シマノNEXUS INTER-3を例にギア比を見る
SG-3R40の1速は0.733
シマノの現行製品仕様では、NEXUS INTER-3「SG-3R40」の1速は0.733です。
2速の1.000を基準に考えると車輪側の回転数が少なくなるため、発進や坂道でペダルを軽くしたいときに使いやすい段です。
2速1.000、3速1.364
SG-3R40の2速は1.000、3速は1.364です。
1速から3速までの総変速比は186%です。これは最も高い1.364と最も低い0.733の比率から、約1.86倍の変速幅があることを表しています。
| SG-3R40 | 内装ギア比 | 位置付け |
|---|---|---|
| 1速 | 0.733 | 減速側 |
| 2速 | 1.000 | 直結 |
| 3速 | 1.364 | 増速側 |
| 総変速比 | 186% | 1速から3速までの変速幅 |
数値はシマノ公式の内装ハブ製品仕様で確認できます。
モデルによって比率は違う
ここは内装3段を調べるときに特に注意したい点です。
同じシマノNEXUSのINTER-3でも、SG-3R75-BはSG-3R40とは異なるギア比になっています。
| モデル | 1速 | 2速 | 3速 | 総変速比 |
|---|---|---|---|---|
| SG-3R40 | 0.733 | 1.000 | 1.364 | 186% |
| SG-3R75-B | 0.632 | 0.741 | 1.000 | 158% |
SG-3R75-Bでは3速が1.000で、SG-3R40のように2速が直結ではありません。
そのため、「内装3段は1速0.733、2速1.000、3速1.364」とすべての製品に当てはめるのは正確ではありません。自分の自転車について調べる場合は、ハブの型番や自転車の取扱説明書を確認してください。
内装3段を上手に使うコツ
内装3段は、難しい操作を覚えなくても使えます。ただし、変速時のペダルの踏み方には注意が必要です。
シマノの内装3段用ユーザーマニュアルでは、1段ずつ変速し、変速するときはペダルの踏力を弱くするよう案内されています。
坂道でペダルを強く踏み込んだまま無理にレバーを操作するより、いったん踏む力を弱めてから切り替えたほうがスムーズです。
SG-3R40などの内装式では停止中でも変速操作ができるため、信号で止まったあとに1速へ戻しておけば、そのまま軽いギアで発進できます。
使い方の目安は次のように考えると簡単です。
- 発進するときは1速
- 速度が上がったら2速
- 2速では足の回転が速いと感じたら3速
- 坂道や停止前は必要に応じて軽いギアへ戻す
ただし、必ずこの順番で使わなければならないわけではありません。坂の勾配、荷物、自転車のタイヤ径、前後ギアの歯数、脚力によって使いやすい段数は変わります。
詳しい操作上の注意はシマノ公式「内装ハブ3段 シフティングレバー ユーザーマニュアル」でも確認できます。
また、内装ハブは内部に機構が収められていますが、完全防水ではありません。高圧洗浄などは避け、ハブ内部の整備は製品に合った方法で行う必要があります。
内装3段の変速機構はハブ内部にありますが、ペダルの力を後輪へ伝えるチェーンやスプロケットも走行状態に関わります。変速そのものに問題がなくても、チェーンの汚れや乾燥、摩耗によって異音や動きの重さを感じることがあります。
チェーンが黒く汚れている、乾いた音がする、いつ注油すればよいか分からない場合は、自転車チェーンの掃除・注油方法と交換サインもあわせて確認してみてください。掃除で済む状態と、自転車店へ点検を依頼したほうがよい状態を分けて解説しています。

内装3段が変速しない・滑る場合
「レバーを動かしても段が変わらない」「こぐと一瞬空転する」「以前より変速しにくい」という場合、すぐにハブを分解するのではなく、まず外から確認できる部分を見てください。
内装3段は内部構造だけでなく、変速ワイヤーや調整位置のずれでも正常に変速できなくなることがあります。
ワイヤーや調整表示を確認
最初に、変速ワイヤーが外れていないか、明らかなほつれ・折れ・強いたるみなどがないかを目視します。
次に確認したいのが、2速にしたときの調整位置です。
シマノの内装3段には構成によって「カセットジョイント」を使うタイプと「ベルクランク」を使うタイプがあり、確認する目印も異なります。
| タイプ | 2速で確認するポイント |
|---|---|
| カセットジョイント | 黄色のセットラインが適切に重なっているか |
| ベルクランク | プッシュロッドの線とハブ軸端面の位置などを確認 |
シマノのユーザーマニュアルでは、カセットジョイントのセットラインの重なりが不足している場合などは販売店や代理店への相談が案内されています。
またSG-3R40・SG-3R42用のディーラーマニュアルでは、ベルクランク式について2速位置でプッシュロッドとハブ軸の位置を基準に調整する方法が示されています。
ただし、シマノ公式ディーラーマニュアルは専門知識を持つ整備者を主な対象とした資料です。位置が明らかにずれている場合でも、作業に慣れていなければ無理に分解・調整せず、自転車店へ相談するほうが安全です。
異音・空転が続くなら自転車店へ
変速位置が合っていない状態では、ギアがうまく噛み合わず、異音やペダルが滑るような現象につながる可能性があります。
特に、力を入れてこいだときに突然ペダルが空転する状態は、バランスを崩す原因にもなります。何度も症状が出る場合は、そのまま乗り続けず点検を依頼してください。
また、「空転する=必ず内装ハブの故障」とも限りません。チェーンやスプロケットの摩耗など、駆動系の別の部分でも似た症状が起こることがあります。
原因を特定できない場合や、ハブ内部から異常な音が続く場合は、自転車店で変速ワイヤー・チェーン・スプロケット・内装ハブをまとめて確認してもらうと切り分けやすくなります。
製品を自分で分解・改造することは、シマノのユーザーマニュアルでも禁止されています。この記事では安全面を考え、ハブ内部の分解修理手順までは扱いません。
内装3段と外装変速はどちらが向いている?
内装3段と外装変速は、どちらかが一律に優れているわけではありません。走る場所や使い方によって向き・不向きがあります。
| こんな使い方 | 検討しやすい方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 信号の多い街中・買い物・通勤通学 | 内装3段 | 発進・平地・速度が乗った場面を3段で使い分けやすく、停止中に変速できる |
| 変速操作をシンプルにしたい | 内装3段 | 1・2・3の3段から選べばよい |
| 坂の勾配が頻繁に変わる | 外装多段変速も候補 | 段数が多いモデルなら、より細かく重さを選びやすい |
| スポーツ走行で細かなギア選択をしたい | 外装変速 | 多段化しやすく、速度や勾配に合わせて細かく選択できる |
日常のシティサイクルで「発進・普通の平地・速度が乗った平地」の3場面をシンプルに使い分けたいなら、内装3段は分かりやすい構成です。
一方、長い坂道が多い地域や、細かくペダルの重さを調整したい場合は、より段数の多い変速方式が合う場合があります。
まとめ
自転車の内装3段変速は、後輪ハブの内部で歯車による力の伝達経路を切り替え、3種類のギア比を作る仕組みです。
代表的なシマノNEXUS SG-3R40では、1速0.733、2速1.000、3速1.364となっており、1速は発進や上り坂、2速は普段の平地、3速は速度が乗った平地で使いやすくなっています。
ただし、SG-3R75-Bのように0.632・0.741・1.000という異なる比率を採用する内装3段もあります。「3段変速だから内部の比率も同じ」とは限らないことを覚えておくと、仕組みを正しく理解しやすくなります。
変速しにくい、異音がする、ペダルが滑るといった場合は、まずワイヤーや2速位置での調整表示を確認します。症状が続く場合や内部の不具合が疑われる場合は、無理に分解せず自転車店へ点検を依頼してください。