学校の宿題や入試で「将来の夢について書きましょう」と言われても、すぐに答えが浮かぶとは限りません。
周りの人が「医師になりたい」「スポーツ選手を目指している」と話していると、自分だけ夢がないように感じて焦ってしまうこともあるでしょう。
しかし、将来の職業が決まっていないからといって、作文が書けないわけではありません。「まだ探している途中であること」や「これからどのような人になりたいか」も、十分に作文のテーマになります。
大切なのは、立派な夢を無理に作ることではありません。今興味を持っていること、心に残っている経験、自分が大切にしたい考えを整理し、自分の言葉で伝えることが重要です。
この記事では、夢が決まっていない人でも取り組みやすい作文の考え方、基本構成、年代別の書き方、例文、避けたい表現などをやさしく解説します。
将来の夢が決まっていなくても作文は書ける
職業名を書かなければならないわけではない
「将来の夢」と聞くと、先生、看護師、警察官、料理人などの職業を書かなければならないと思う人もいるかもしれません。
けれども、夢は職業だけを指すものではありません。
- 人の話をきちんと聞ける大人になりたい
- 困っている人に声をかけられる人になりたい
- 好きなことを大切にしながら働きたい
- 新しいことに挑戦できる人になりたい
- 家族や周りの人を安心させられる人になりたい
このような「将来どうありたいか」という考えも、立派な夢です。
職業が決まっていない場合は、なりたい人物像や理想の暮らし方を中心に書くと、自分らしい作文に仕上げやすくなります。
「まだわからない」という状態も題材になる
夢が見つかっていないことを隠す必要はありません。
「私はまだ、将来なりたい職業を決めていません」と正直に書き、そのあとに理由や現在の考えを続ければ、作文として成立します。
たとえば、興味のあることが多すぎて一つに決められない人もいれば、まだ知らない仕事がたくさんあるため、今は選べない人もいるでしょう。
そのような場合は、次のように展開できます。
「今は一つの仕事に決めるより、さまざまな経験をして、自分に向いていることを探したいと考えています。」
夢が決まっていなくても、自分の状態を受け止め、これからどうしたいかまで書けば、前向きな内容になります。
作文で見られるのは考え方と伝え方
将来の夢を題材にした作文では、夢の大きさだけが評価されるわけではありません。
読み手が知りたいのは、どのような経験からその考えに至ったのか、今の自分をどう捉えているのか、これから何を大切にしたいのかという点です。
有名な職業を書いていても、理由がほとんど説明されていなければ、気持ちは伝わりにくくなります。
反対に、夢が未定でも、迷っている理由や興味のあることを具体的に書けば、誠実で読みごたえのある作文になります。
作文を書く前に自分の中から材料を集めよう
好きなことを思い出す
何を書けばよいかわからないときは、最初から職業を探そうとせず、自分が好きなことを書き出してみましょう。
- 本や漫画を読むこと
- 絵や工作をすること
- ゲームで作戦を考えること
- 動物の世話をすること
- 友達と話すこと
- 料理やお菓子を作ること
- 機械やパソコンを触ること
好きなことが、そのまま職業につながらなくても問題ありません。
「なぜ好きなのか」「どのようなところが楽しいのか」まで考えると、自分が大切にしていることが見えてきます。
たとえば、ゲームが好きな理由が「みんなで協力して目標を達成するのが楽しいから」であれば、チームで働くことへの関心を作文にできます。
心に残っている出来事を探す
作文には、実際に経験した出来事を入れると具体性が生まれます。
大きな事件や特別な体験である必要はありません。日常の小さな出来事でも十分です。
- けがをしたときに保健室の先生が助けてくれた
- 年下の子に勉強を教えたら喜んでもらえた
- 家族の料理を手伝って感謝された
- 苦手な発表を最後までやり切った
- 地域の清掃活動に参加した
- ペットの世話を続けて責任の重さを知った
出来事を選んだら、「そのとき何を感じたか」「その経験によって考え方がどう変わったか」を整理します。
この部分が、作文の中心となる材料です。
大切にしたいことを言葉にする
好きな職業が思い浮かばなくても、自分が大切にしたいことなら考えられる場合があります。
たとえば、「人を安心させたい」「自分で考えて行動したい」「誰かと協力したい」「自然を守りたい」などです。
次の質問に答えてみると、作文の方向を決めやすくなります。
- どのようなときにうれしいと感じるか
- 人から何を褒められることが多いか
- どのような人をすてきだと思うか
- 身近な困りごとの中で改善したいことはあるか
- 将来も続けていたいことは何か
答えの中に何度も出てくる言葉があれば、それを作文の軸にしてみましょう。
将来の夢作文は4つの流れで組み立てる
最初に現在の考えを伝える
作文の書き出しでは、今の自分が将来についてどう考えているかを示します。
夢が決まっている場合は、職業や目標を書いてもよいでしょう。決まっていない場合は、そのことを率直に書いて構いません。
書き出しの例は次のとおりです。
「私には、まだ将来なりたい職業がありません。以前は、夢がないことを恥ずかしいと思っていました。」
「私は将来、人を笑顔にできる仕事をしたいと考えています。しかし、具体的な職業はまだ決めていません。」
「私が将来について考えるようになったきっかけは、学校行事で年下の子を手伝ったことです。」
最初に問題意識やきっかけを置くと、その先を読みたくなる書き出しになります。
次にきっかけや経験を書く
本文では、なぜそのように考えるようになったのかを説明します。
「人の役に立ちたい」とだけ書くよりも、実際の経験を添えた方が気持ちは伝わります。
たとえば、次のように書けます。
「学校で友達が困っていたとき、私は声をかけ、一緒に先生のところへ行きました。あとで友達から『助かった』と言われ、私もうれしくなりました。」
出来事を書くときは、次の3点を意識しましょう。
- 何が起きたのか
- そのとき自分は何をしたのか
- どのような気持ちになったのか
この流れで書くと、出来事の様子が読み手に伝わりやすくなります。
将来どうなりたいかへつなげる
経験を書いたあとは、その出来事と将来の考えを結びつけます。
「この経験から、私は困っている人に気づき、行動できる大人になりたいと思うようになりました。」
「まだ仕事の名前は決まっていませんが、人と協力しながら誰かを支えられる仕事に興味があります。」
このように、体験から得た気づきを将来像へつなげると、内容に一貫性が生まれます。
最後に今後の行動を書く
作文の終わりには、これから取り組みたいことを書きます。
夢を必ず実現すると断言する必要はありません。今できる小さな行動を示せば十分です。
「これからは、興味を持ったことに積極的に挑戦し、自分に合った道を探していきたいです。」
「人の話を最後まで聞くことを心がけ、周りの人を支えられる力を身につけたいです。」
「まずは苦手な勉強から逃げずに、一つずつできることを増やしたいと思います。」
今後の行動を書いて締めくくると、前向きな印象を残せます。
夢がないときに使える3つの書き方
夢を探している途中として書く
一つ目は、「今は夢を探している途中である」という内容でまとめる方法です。
この書き方では、夢がないことを結論にするのではなく、これから見つけるために何をしたいかまで書きます。
例文は次のとおりです。
「私はまだ、将来なりたい職業を決めていません。以前は、早く決めなければならないと思っていました。しかし、世の中には私が知らない仕事がたくさんあります。今は一つに決めるより、さまざまな経験をすることが大切だと考えています。これから本を読んだり、いろいろな人の話を聞いたりして、自分が心から取り組みたいことを探していきたいです。」
迷いながらも前へ進もうとする姿勢が伝わる内容です。
なりたい人物像を中心に書く
二つ目は、職業ではなく、なりたい人の姿を書く方法です。
たとえば、「失敗してもやり直せる人」「人にやさしくできる人」「責任を持って行動できる人」などをテーマにします。
例文は次のとおりです。
「私には、まだ具体的な夢はありません。しかし、将来は人の失敗を責めるのではなく、もう一度挑戦できるように応援できる人になりたいです。私自身、失敗したときに友達の言葉に助けられた経験があります。職業が何であっても、相手の気持ちを考えられる人でいたいと思います。」
この方法なら、職業を決めていなくても、自分の価値観をしっかり伝えられます。
興味のある分野について書く
三つ目は、職業を一つに限定せず、興味のある分野を中心にする方法です。
たとえば、「動物に関わりたい」「ものづくりを続けたい」「子どもを支える仕事に興味がある」などです。
例文は次のとおりです。
「私は工作や絵を描くことが好きです。自分で考えたものを形にできたとき、とてもうれしくなります。デザイナーや建築家など、ものを作る仕事にはいろいろな種類があります。今は職業を一つに決めていませんが、将来も自分の考えを形にできる仕事をしたいです。」
複数の可能性を残したまま、将来への関心を表現できます。
小学生は身近な出来事から素直に書こう
難しい言葉より自分が普段使う言葉を選ぶ
小学生の作文では、難しい表現を無理に使う必要はありません。
自分が実際に感じたことを、わかりやすい言葉で書く方が気持ちは伝わります。
たとえば、「私は社会に貢献できる人物を目指します」と書くよりも、「困っている人を見つけたら、声をかけられる大人になりたいです」と書く方が具体的です。
「楽しかった」「うれしかった」「くやしかった」といった感情を入れると、小学生らしい素直な作文になります。
家族や学校での経験を使う
小学生にとって書きやすいのは、家族、学校、習い事、地域での出来事です。
たとえば、次のような経験を使えます。
- 先生に勉強を教えてもらった
- 病院でやさしく声をかけてもらった
- 消防士や警察官の仕事を見学した
- 家族と料理を作った
- 飼っている動物の世話をした
- 試合や発表会に向けて練習した
身近な出来事なら、そのときの様子や気持ちを思い出しやすいため、文章も自然に広がります。
小学生向けの作文例
「わたしは、まだ将来の夢を決めていません。でも、動物にかかわる仕事に興味があります。家で飼っている犬が病気になったとき、動物病院の先生がやさしく診てくれました。犬が元気になったとき、わたしはとてもうれしかったです。その経験から、動物を助ける仕事はすてきだと思うようになりました。これから動物のことをもっと調べて、自分にできることを見つけたいです。」
この例文では、夢が決まっていないことを正直に書きながら、興味を持ったきっかけと今後の行動を示しています。
中学生・高校生は迷いや変化も文章に入れる
考えが変わった過程を書く
中学生や高校生の作文では、最初から答えだけを書くよりも、自分の考えがどのように変化したかを説明すると深みが出ます。
たとえば、以前は有名な職業に憧れていたものの、経験を通じて考えが変わったという流れです。
「小学生の頃は、テレビで見た姿に憧れて医師になりたいと思っていました。しかし、進路について調べる中で、医療にはさまざまな職種があることを知りました。今は職業を一つに決めるのではなく、自分がどのような形で人を支えたいかを考えています。」
このように迷いや変化も含めると、自分自身と向き合っていることが伝わります。
社会との関わりを考える
中学生や高校生は、「自分がなりたいもの」だけでなく、「自分が社会にどのように関わりたいか」という視点を加えると、作文の内容が広がります。
たとえば、ITに興味がある場合でも、単にプログラマーになりたいと書くのではなく、技術を何に役立てたいのかまで考えます。
「私は、年齢や障害に関係なく、誰でも簡単に使えるアプリを作ることに興味があります。祖母がスマートフォンの操作に困っている姿を見て、使う人にやさしい仕組みが必要だと感じたからです。」
身近な問題と将来の関心をつなげると、説得力が高まります。
中高生向けの作文例
「私には、まだ一つに決めた将来の夢はありません。以前は、夢がない自分は目標を持っていないように感じていました。しかし、学校の行事でさまざまな役割を経験し、私は人と協力して何かを完成させることが好きだと気づきました。準備中は意見が合わないこともありましたが、話し合いを重ねて発表を成功させたとき、大きな達成感がありました。将来は、仲間と考えを出し合いながら、新しいものを生み出せる仕事に就きたいです。そのために、今は自分の意見を伝える力と、人の意見を聞く力の両方を身につけたいと考えています。」
具体的な職業名がなくても、経験、気づき、将来像、今後の行動がそろった作文になります。
作文コンクールや受験では自分だけの体験を入れる
よくある夢でも切り口を変える
医師、教師、スポーツ選手、保育士などは、多くの人が作文に書くテーマです。
同じ職業を選んでも、自分の体験や目指す姿を具体的にすれば、ほかの作文との差を出せます。
たとえば、「教師になりたい」だけで終わらず、次のように掘り下げます。
「私は、勉強が得意な生徒だけでなく、わからないと言えずに困っている生徒にも気づける先生になりたいです。私自身が授業についていけなかったとき、放課後に声をかけてくれた先生に救われたからです。」
職業名よりも、「どのような人を支えたいか」「なぜそう思うのか」を詳しく書くことが重要です。
失敗や苦手な経験も強い材料になる
作文では、成功した話だけを書く必要はありません。
失敗した経験や苦手なことと向き合った出来事は、自分の成長や考え方を示せる材料になります。
たとえば、部活動の試合に出られなかった経験から、選手を支える仕事に興味を持ったという展開も考えられます。
「私は試合のメンバーに選ばれず、最初は練習する意味がわからなくなりました。しかし、記録や道具の準備を担当し、チームにはさまざまな支え方があると知りました。この経験から、目立つ役割だけでなく、周りを支える仕事にも関心を持つようになりました。」
失敗から何を学び、その後どう変わったかを書くことで、印象に残る内容になります。
結論は大きな宣言より具体的な一歩で締める
作文の最後に「必ず夢を叶えます」と強く宣言するのも一つの方法ですが、内容によっては無理に見えることがあります。
それよりも、これから実行する具体的な行動を書いた方が、現実味のある締めくくりになります。
- 関心のある分野の本を読む
- 学校説明会や職業体験に参加する
- 苦手な教科を毎日少しずつ勉強する
- 家族や先生に仕事の話を聞く
- 興味のある活動に挑戦する
自分の未来に向けて、今から何を始めるかを書きましょう。
将来の夢に使えるテーマの見つけ方
人を支えることに関心がある場合
人の役に立つことや誰かを支えることに興味がある場合は、医療、福祉、教育、接客、公共サービスなどの分野を考えられます。
職業の例には、医師、看護師、介護職、保育士、教師、カウンセラー、消防士などがあります。
ただし、職業名を並べるだけでは作文になりません。
「どのような人を支えたいのか」「自分のどのような経験とつながっているのか」を考えましょう。
表現やものづくりが好きな場合
絵、音楽、文章、動画、料理、工作などが好きな人は、何かを作り、相手に届けることをテーマにできます。
イラストレーター、デザイナー、料理人、建築士、作家、動画制作者など、関連する職業はさまざまです。
まだ職業が決まっていない場合は、「自分が作ったもので人を楽しませたい」という将来像でも構いません。
作品を作った経験や、誰かに喜んでもらった出来事があれば、作文に取り入れましょう。
科学や技術に関心がある場合
パソコン、ゲーム、ロボット、宇宙、環境問題などに興味がある人は、技術を使って何を実現したいかを考えます。
たとえば、ゲームが好きな場合でも、「人気ゲームを作りたい」だけでなく、次のような方向へ広げられます。
- 離れている人同士が交流できるゲームを作りたい
- 楽しみながら学べるアプリを作りたい
- 高齢者でも使いやすい機器を開発したい
- 環境を守るための技術を研究したい
好きなことと社会の困りごとを結びつけると、内容に深みが出ます。
安定した生活や身近な幸せをテーマにする
将来の夢は、目立つ職業や大きな成功だけではありません。
家族と穏やかに暮らしたい、好きなことを続けられる生活をしたい、仕事と自分の時間を大切にしたいという考えも、将来像の一つです。
「私は、有名になることよりも、自分の仕事に責任を持ち、家族との時間も大切にできる大人になりたいです。」
このような作文では、その生活を実現するために、どのような力を身につけたいかまで書くと内容がまとまります。
ありがちな失敗を直して伝わる作文にしよう
「頑張りたい」だけで終わらせない
「夢に向かって頑張りたいです」という表現は使いやすい一方で、それだけでは何をするのかが伝わりません。
次のように、行動を具体的にしましょう。
修正前:
「将来のために勉強を頑張りたいです。」
修正後:
「まずは苦手な英語を毎日復習し、自分の考えをさまざまな人に伝えられる力を身につけたいです。」
「何を」「なぜ」「どのように」のうち、少なくとも一つを加えると具体的になります。
職業の説明だけを書かない
なりたい職業について調べた内容を長く書きすぎると、自分の作文ではなく、職業紹介のようになってしまいます。
仕事内容や必要な資格を書く場合でも、それが自分の考えとどうつながっているのかを示しましょう。
「看護師は患者の世話をする仕事です」と説明するだけでなく、「私は不安を感じている人に安心してもらえるよう、相手の話を丁寧に聞ける看護師になりたいです」と書くことが大切です。
例文をそのまま写さない
作文例は、構成や言葉のつなぎ方を学ぶために役立ちます。
しかし、文章をそのまま写すと、自分の経験や気持ちが伝わらなくなります。
例文を参考にするときは、次の部分を自分の内容へ置き換えてください。
- 夢について考えたきっかけ
- 実際に起きた出来事
- そのときに感じたこと
- 自分が得意なことや苦手なこと
- これから取り組みたい行動
同じ構成を使っても、体験が自分のものであれば、オリジナルの作文になります。
書き終わったら声に出して確認する
作文を書き終えたら、一度声に出して読んでみましょう。
黙って読んだときには気づかなかった言葉の重なりや、長すぎる文章を見つけやすくなります。
次の項目も確認してください。
- 最初と最後で話がずれていないか
- 同じ言葉を何度も使っていないか
- 出来事の順番がわかりやすいか
- 夢を持った理由が書かれているか
- 自分の経験や考えが入っているか
- 誤字や脱字がないか
家族や先生に読んでもらい、わかりにくい部分を教えてもらうのも効果的です。
まとめ
将来の夢が決まっていなくても、作文を書くことはできます。
「まだ探している途中であること」「どのような人になりたいか」「どのようなことに興味があるか」も、将来について考える立派な材料です。
作文を書く前には、好きなこと、心に残っている出来事、大切にしたい考えを整理してみましょう。
文章は、現在の考え、きっかけとなった経験、将来なりたい姿、これからの行動という順番で組み立てると、読み手に伝わりやすくなります。
夢を立派に見せようとして、誰かの言葉を借りる必要はありません。迷っている気持ちも含め、自分が実際に感じていることを素直に書くことが大切です。
今は答えが見つかっていなくても、考えたり、経験したりする中で将来の方向は少しずつ見えてきます。夢を決めるための作文ではなく、自分の未来について考える機会として取り組んでみましょう。